進学実績で大分県No1の公立トップ高校である大分上野丘高校が私服登校許可の検討を始めているというニュースは、なかなか衝撃だったと思います。数年前まで髪型のツーブロックの禁止を緩和する話題があったところから考えれば、その落差がすごく、多様性や時代にそぐわない校則の見直しのスピードが早く、時代の流れのはやさを感じます。
この記事では、大分上野丘高校の私服登校許可について、県外の状況や県内で服装が自由な他の高校の動向などをお伝えして、私服登校許可による影響を考察します。
1、私服登校が許可されている他県の学校の状況について
全国的に見ても大分に限らず高校の私服登校は珍しいのが現状ですが、一部学校では許可されています。大きく4タイプあると思われます。
1つ目のタイプは、有名私立大附属です。具体的には、早稲田大学高等学院、慶應義塾中等部、青山学院中等部・高等部、同志社中学校・高等学校などです。
2つ目のタイプは、全国屈指の超進学校で、灘中学校・高等学校、麻布中学校・高等学校、武蔵中学校・高等学校などです。
3つ目のタイプは、公立トップ校です。具体的には、札幌南高校、秋田高校、松本深志高校など、東日本の公立トップ校が私服登校を取り入れている場合が多いです。
4つ目のタイプは、通信制高校です。通信制の多くの学校が私服OKになっています。
これらの学校の私服許可にも程度の差があり、式典は制服でないといけない場合が多かったり、サンダルなどは禁止だったりするところも多く見られます。
とはいえ、全国的には数は少ないものの、私服登校の高校はかなりあって、どちらかといえば難関校で導入が目立っている感じを受けます。
2、県内の服装が比較的自由な学校の状況
県内において通信制高校以外で私服登校が認められているところはありませんが、服装に自由な高校はいくつかあります。特に顕著なのが大分工業高等専門学校(大分高専)と岩田中学校・高等学校です。それぞれについて紹介していきます。
(1)大分工業高等専門学校(大分高専)
大分工業高等専門学校は、5年制の高等専門学校です。全日制の公立高校などに比べると校則はゆるく、服装も自由です。
当塾の代表は10年前ほど、短期間ですが大分高専で教えていたことがありますが、制服はあるものの、制服をどう着こなすかという部分は自由でした。また、部活や実験のための作業服のような服装の生徒もおり、全体的には学校に関わる服装であればOKという感じでした。また、頭髪やピアス、女子の化粧も自由で、それぞれの好きなスタイルで学校生活を過ごしていました。
(2)岩田中学校・高等学校
岩田学園は大分県初の中高一貫校であり、ICT教育の先進校でもあり、大分の中ではいろいろな分野で先駆的な試みをしている学校です。その中でも、近年変化があるのは、服装の選択肢の拡大です。
岩田中高には制服があるのですが、シャツや体操服の色を選べたり、夏はポロシャツを選べたりと、統一感はある中で各々が自由なスタイルを選択できる自由がある学校です。また、髪型もかなり自由な印象で、男子で長髪の生徒も見られ、公立高校に比べるとかなり自由がある印象です。
これ以外にも、大分舞鶴高校では登校時の制服と私服を選べる「カジュアルデー」があったりと、大分でも少しずつ高校の服装ルールの緩和の方向に向かっているように思います。
3、私服登校許可の影響について
最後に、私服登校許可の影響について、大きく2つを取り上げて、考察したいと思います。
(1)学力低下や進学実績の低下を招くという懸念
そもそも制服を作って厳しい服装・頭髪のルールがあったのは、服装や頭髪の乱れが学校の風紀や学力に強く影響すると考えられていたからです。実際に、私の母校である大分豊府高校では、私の時代は服装・頭髪ルールがとても厳しかったのですが、それは以前に服装や頭髪の自由さが学校全体の緩みに繋がったという反動からだったと記憶しています。大分上野丘高校の私服登校許可でも服装の乱れから学力や進学実績の低下の懸念があるのではないかという意見もあると思います。
しかし、私は大きく分けて2つの理由で、私服登校許可の学力や進学実績への影響は少ないのではないかと考えています。
第一に、服装と学力低下を結びつけるのは印象論で、実際にはそこまで関係がないと思うからです。これは大分高専に勤めていた時の経験からそう思います。案外、派手な格好をしていた子の成績はよかったですし、今の時代は服装よりもスマホとどう付き合うかの方が成績との相関は高そうです。
第二に、今の大分上野丘高校のレベルの高さと中での競争からすれば、格好がどうかなどは小さな問題だと思うからです。昔も県内No1の進学校でしたが、現在は全県一区になりより広い範囲から優秀な生徒が集まり、切磋琢磨しています。服装の自由化くらいで揺れる子は高校入試でふるい落とされるでしょうし、中での競争も激化しており、影響はほとんどないと考えるのが自然かなと思います。
(2)大分上野丘高校のさらなる人気アップについて
現状でも県内随一の進学校として人気校ですが、私服登校がOKになればさらに人気が高まると考えられます。ルールが厳しいところより緩い方がよいという人が大多数でしょうから、人気がさらに高まるのは必然だと思います。
4、まとめ
大分上野丘高校の私服登校許可のニュースについて考察してきました。まとめると、
・私服登校許可は全国的にも珍しいが、有名私立大附属、私立の超進学校、東日本の一部公立トップ高校では前例がある
・県内にも制服はあるが自由な学校はあり、年々広がっている
・私服登校許可による学力や進学実績への影響はほとんどないと考えられる
・私服登校許可によって、高校入試における大分上野丘高校の人気はさらに高まると考えられる
最後に私見として、大分上野丘高校の私服登校許可は歓迎すべきだと思いますが、服装の自由化を県内の高校が全面的に進めるべきだとは思わないことだけ主張したいと思います。一律に制服を着るか着ないかより、いろんなタイプの学校がある方が生徒の選択肢は広がるはずです。大分上野丘高校の後を追って他の学校が私服化に舵を切るのは微妙かなと思います。